なんだか、ほとんど更新をしないうちに年末になってしまった。
その間「六ヶ所村ラプソディ」の大ヒット(この手の映画としては大ヒットだし、ヒット以上に話題性が大きかった)をきっかけに、環境運動の人たちの間では青森県六ヶ所村の核燃料再処理工場への操業反対運動が盛り上がっているそうだ。実際、再処理工場は来年2月に本格稼働予定なので、今反対しないと間に合わないのは確かだ。
私自身も、原子力発電を積極的に推進すべきではない、と考えているので、自分では反対派に近いと感じている。ただし、化石エネルギーによる地球温暖化問題と代替エネルギーの開発状況を考えると、残念ながらあと20~30年ぐらいは原子力発電所を使わざるを得ない、とも思っているので、人によっては推進派というかもしれない。
とはいえ、そんなどっちつかず?の私から見ても、かなりマズいパンフレットを先日もらってしまった。
先日といってもかなり前の話だが、11月に行われた再処理反対ライブ向けに配られたパンフで、そこにはプルトニウムの危険性について
「角砂糖5個分で日本全滅」
と大きく書いてある。
私は最初、角砂糖5個分じゃ原爆にならないので、何だろう??思った。原爆というのは実は小型化するのがとても大変で、普通は5kg以上プルトニウムが必要なのだ。で、よくよく本文を見ると、プルトニウムはその放射能によって「この世で一番の猛毒」のため、角砂糖5個分あれば日本人全員を死に至らしめるということらしい。
そこで試しに計算してみると、角砂糖5個分のプルトニウム239といえば、1個が1cm角とすると体積は5mlなので、プルトニウム239の比重の20をかけると質量は5×20=100g。100gを人口の約1億で割るとひとりあたり1μg(μg=百万分の一g)。この程度では化学的毒性はほとんどないので、放射線の影響だけさらに計算してみる。
プルトニウム239の放射能は1gあたり23億Bq(ベクレル)なので、1μgの放射能は2300Bq(ベクレル)。ここによると、プルトニウム239が1ベクレルあると、50年間で0.31mSv(シーベルト)の放射線を浴びることになるというので、1μg吸い込んだ場合の50年分の放射線量を計算すると、2300×0.31=713mSv。1年分に直すと、713/50=14.26mSv。
というわけで、ひとりあたり浴びる放射線量はざっと見て1年で約14mSvとなるのだが、短期間被爆ですら致死量は7000mSvとされていて、桁が全然違う。この程度の量では1年以内の急性死亡原因にはまずならないし、悪くて長期的に発ガンの確率がやや上がる程度のものだろう。
ちなみにいえば、地球上の人間は宇宙線などで1年間に2mSv程度の放射線を浴びているし、年14mSv程度の低レベル被爆については、いまのところ疫学的調査で決定的な害は見つかっていない(今後研究が進めば発ガンリスクが立証される可能性もあるので、絶対安全とはいえないが)。
確かに、プルトニウムが毒なのは間違いないし、その取扱を慎重にしなくてはならない。とくに、毎日プルトニウムを取り扱うような職場に勤務する人にとっては、厳しい安全対策がないと怖くて働けない。しかし「角砂糖5個分で日本全滅」はいくらなんでも大げさ過ぎで、ミスリードと言われても仕方ない。
これだけ世界的に原油高、ウラン高が続いているなか、日本でも「せっかくプルトニウムを大量在庫しているんだから、使っちまおうぜ」という動きは大きくなってくるはず。私としては、軍事転用の恐れがあるプルトニウムはあまり存在して欲しくないので、反核燃処理施設の人たちにはぜひとも頑張って欲しいと思っている。
でも、反対したいあまり大げさなデータ解釈を出し続けていると、推進派の人たちに「あんなの反対のために作った理屈で嘘っぱちだ」と突っ込まれ、相手の思うつぼになってしまう。原子力推進反対派の人たちには、冷静にデータを使った議論をしてほしいな、と思う。